以下引用する.
30代半ば以降の社員の賃下げを計画していることがわかった。浮いた人件費を、新たに導入する65歳までの再雇用制度に回すとあることから,ざっと要約すると35歳ぐらいまでは現状のまま据置き,それ以上では給与をカットして60~65歳での雇用者に回すというものと読める.あくまで労働組合への会社側提案なので,これから議論が詰められていくと思われるが,この会社の組合の性格と会社との関係性からしてもある程度事前にネゴられているものと思われる.
何故か具体的な金額水準が不明なのだが,記事内では「具体的な賃下げ幅は示していない。人件費総額が変わらない場合、50代では今より年収が100万円ほど減る例もあるとみられる」となっている.
背景として,厚生年金の受給開始が現状60歳となっているのが,2013年度から25年度にかけて段階的に65歳まで引き上げられるというのがある.より具体的に書くと,1953年度生まれ(現59歳)が2013年度(61歳)から,1961年度生まれ(現51歳)が2025年度(65歳)からになる.こうなると,現状の60歳定年では年金空白の期間ができてしまうので,企業側にも対策が求められている.
ここでの企業側対策の根拠となっているのが,高年齢者雇用安定法になる.現行法は2004年に改正されたもので,2006年からは定年の引き上げや継続雇用制度の導入、定年制の廃止からいずれか1つを選んで実施することが義務付けられている.しかし,これらは施策の実施までが義務付けで,再就職を認めるかどうかは会社側に決定権がある.後述の記事によると,「厚生労働省の11年の調査によると、定年を迎えた約43万5000人のうち、1・8%にあたる約7600人は再就職が認められなかった。」ということだ.
このため,こちらも廃止して希望する場合は必ず雇用するように義務付けるというのが更に改正予定となっており,現状で閣議決定までされている.「労使が合意した場合は企業が再雇用対象者を選ぶ基準を設けられる現行規定を廃止する規制強化が柱」となっている.
で,出てきたのが今回のNTTの案だが,ちょっとひどいとしか言いようがない.完全にババを引いた35歳~40歳の世代にさらなる重しを押しつけるというのは世代間負担をどう捉えているのだろうか.元記事内にもあるが,"30代半ばからの賃下げには「働き盛りには異例の措置で、転職を誘発するおそれがある」"わけで,おそらくそこまで考慮して転職定年と呼ばれる35歳以上を対象にするというのも嫌らしい.
定年延長・再雇用・継続雇用大手各社の事例なんてのを見ても,せいぜい55歳あたりから給与を下げて60歳~65歳に回すぐらいで,ここまでひどいものは見当たらない.
冒頭に触れたように,本来国家公務員制度からいじるべきところが,国家公務員制度改革推進本部の提言はことごとく先送りされており,政治的状況によりいじれない中,NTTが口火を切ったのは,これはこれで政治的な意図を感じざるを得ないのだが,より詳細の情報が出てくるのを待つしかないだろう.
国内大手企業が全体的に同じ方針に追従するようであれば,転職市場にこのあたりの人材が放出されて状況が動く可能性もわずかにあるが,中国とかに流れる怖れもあるわけで.せめて解雇規制とセットでいじるのならまだわからなくもないのだけれど,ちょっと無茶苦茶すぎる.
0 件のコメント:
コメントを投稿