以下は本ブログ内記事へのリンクになるが,これまでの経緯として.
- 週刊ダイヤモンドでのメガバンクによる争奪戦についての記事 (2011/11/02)
- 闇株新聞の記事による東京三菱UFJと野村双方の今に至るまでの事情 (2011/11/14)
- 英フィナンシャルタイムズによる野村総研・不動産売却に関する報道 (2011/11/24)
FACTAの記事は本来は定期購読読者限定の記事なのだが,今回の騒ぎであちらこちらにコピペされているので読むことができる.さすがに貼り付けるのはどうかと思ったので,興味がある人は今のところ騒ぎの震源地であるこことかこことかで全文が読める.
で,FACTAは非常に注意深く書かれた調査報道がある(最近だとオリンパスの件は彼らの功績)一方で,トンデモ記事もたまに載る(Felicaの欠陥を指摘した記事等)という振れ幅の大きい,ある種昔の週刊誌的なメディア(いい意味で)なので,記事を見るまでは煽り記事の可能性が高いと思っていたのだが,なかなかどうして普通にこの流れを裏付ける慎重な記事になっていると感じた.
つまり,ヨーロッパ大混乱で大火傷→資金繰り不安→タイミング悪くOBがオリンパス不正絡みで風評→あわてて手元資金確保(すかいらーく売却,野村総研・不動産売却に向けた動き)に走る,というほぼ既報の通り明らかになっている流れに,英日の両金融当局からの圧力,微妙な条件での劣後債発行という話を追加している.劣後債については破綻時に金利が払われないという条項が問題視されているようだが,これ自体は特に問題はないとする人達もいて意見は割れているようだ.あまり詳しくないので,詳細はリンク先(コメント欄も含めて)等で各自検討を.
また,メガバンクによる救済の動きとしては劣化具合が著しいのではないかと盛り上がりには欠けるとしながらも,東京三菱UFJは海外部門(元リーマン)の売却を条件に付けている一方で,海外部門を強化したい三井住友が出資を打診,みずほは脱落したとしている.
時事通信報道にある「事前の再建・処理計画」というのが刺激的だったのだろうが,これの作成自体はG-SIFIsという国際金融システムに影響が大きい金融機関に課せられているものであり,国内の3大メガバンクは全てこのG-SIFsに含まれている.今年の一覧がこのあたりにあるが,特に銀行に限られているわけでもなく,証券会社も含まれている.つまり,ある種の防災計画のようなもので,これを出したからといって再建処理が近いという性格のものではない.逆に大き過ぎて潰せない金融機関(Too-Big-to-Fail)のリストとも言え,逆に安全だという見方(Putting a Positive Spin on Too-Big-to-Fail)もある.
で,G-SIFIsに含まれていない野村證券にも念のためこれを準備しておくように,と金融庁が指示を出した,というのが今回の記事.引用されている野村幹部の発言によると,"「欧州当局の要望もあり、計画が必要になる」(同社幹部)として、既に内部で検討を進めている" ということなので,英金融当局からの要請でもあるようだ.
したがって,この報道は野村が資本強化を求められているという流れを裏付け,さらにその流れが加速されつつあると読むのが正しいだろう.厳しい状況なのは変わらないのではないかと感じる一方で,それなりに手は打っているなという印象.いざという時に備えた自己資本の改善という中でやはり野村総研・野村不動産の売却はあり得るのかもしれないが,単に取り得るオプションを広げているだけとも取れる.
銀行免許を取得(そのためには自己投資部門と不動産部門は売却が必要のようだが)すれば破綻時の資金注入という日本金融当局によるセーフティーネットが張られるし,資金注入に関しては最悪事前に銀行傘下に入っていれば得られるということなので,やはり破綻というのはおおげさなシナリオだろう.もっとも,過去の負の遺産なんて代物がこのタイミングで爆発したりするといろいろとたいへんなことになり得るのだろうが.
騒ぎそのものは以下の書籍の宣伝が目的でしょうな.その一方で野村證券側のツイッターでの対応も決して褒められたものではないけどね.「評論家と名乗る人物……法的な対応を検討」という書き方はちょっとなぁ.土日で慌てての対応なんだろうけど.
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